洋の東西を問わず戦争・紛争による破壊、焼失は繰り返し行われてきた。遠くはクレオパトラ7世時代のアレキサンドリアの貴重な文献・資料の焼失、近くは旧・ユーゴの中世都市の図書の焼失など枚挙にいとまがないのであったが、ここへ来て今回タリバンたちの愚挙は言語を絶する類の大暴挙である。
確かにアフガニスタンは歴史上いかなる権力にも屈することがなかったか、屈してもすぐさま勇猛果敢に闘って自主独立を勝ち取ってきた。しかし、それとこれとは違うのである。
ソ連との10年に及ぶ戦争でも、他国の武器援助を受けたとはいえ、戦ってきたのはアフガンに住むムジャヒディン(自由の戦士)であったわけだし、マスード率いるムジャヒディンはイスラームの聖戦として頑張り抜いたのだ。その後の長引く内戦でも、無論仏像破壊などマスード派は思いもよらなかったことで、マスードは長倉洋海氏との会見で、この対ソ連戦の終結後カブール大学で建築の勉強をしたいと言っていたくらいなのである。
マスードがタリバンに追われて久しい。
タリバンはイスラームの原理主義を復活させようと目論見、結局孤立してゆくのであろうが、あまりに犠牲が大きすぎた。その代償は誰が支払うのか。
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