8      内部告発
 
 日本道路公団の欺瞞的行為を文芸春秋社に寄稿したために左遷され、赴任先で解任された人がいた。彼のしたことの是非については諸説あり、賛否の分かれるところでもあり、今後の議論の余地ものこされているのだが、それをどう勘違いしたのか、まるで追い打ちをかけるように扇国土交通相が今日(7月29日)不埒なことをのたまった。
 
 国交相の発言の主旨は、(公務員として)内部にいる者が本名で内部告発するのはおかしいというものであるが、そりゃちょっとおかしかないだろうか、内部にいるから内部告発なのであって、外部の者が告発したなら別の表現となろう。それにだいいち、国民の代表者であるべきはずの道路族議員の先生方が告発しようはずもない。
 
 国家公務員や各種団体役員、とりわけ高級官僚のずさんさ、でたらめさに対してわれわれは監視の目を封じられているし、肝心な部分を知ることができないから、われわれが不利益を被ることのないよう、また、税金が無駄づかいされることのないよう議員や大臣が監視、監督しなければならないのであり、それは彼らの義務なのだ。
 
 その義務を毅然と守る気が彼らにないのは先刻承知のこととしても、大臣たるものにあるまじき物言いである。議員であろうと、民間人であろうと、任命された大臣は各省庁やそこ勤務している人々にではなく、われわれ国民の立場に身を置いていなければなるまい。
それを、どうとりとめてか木更津の、味方する相手が違うではないか、かばう相手が違ゃせんか。国土交通省所属の道路公団と、旧建設省事務次官から公団に天下った役人の利益のためにではなく、国民の利益のために行動するのが議員・大臣たるものの本分であろう。
 
 こんなことだからますます、国家公務員は省益、庁益を守ることしか頭にないという誤解を与えるようになるのである。国民の利益を守るために行動した人を解任、格下げして、あまつさえ提訴などとは何事、われわれに真実を知ってもらおうとした人を窮地に陥れるなどという愚挙は、今後こころある人の告発の芽を摘み取るようなものである。
 
 内部告発された公団関係者、特に天下った者たちや幹部連中は、まるで顔に泥を塗られでもしたかのような面持ちであろう。しかし、そう思うのは彼らが明らかに国民側に立っていないからである、もとを正せば彼らも国民のひとりであろうに、特権を付与された組織と自己を守るのに汲々とするのは彼らの性(サガ)とでもいうべきか。
更新日時:
2003/07/31
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