63      イワニセビッチ
 いうまでもなく2001年ウィンブルドンの勝者である。1971年9月クロアチア生まれの29歳、身長193a、体重82`のしなやかにして均整のとれた体、過去3回ウィンブルドンのファイナルに進み敗退している。年齢を考えると今年が最後のチャンスだった、そしてそのラストチャンスをものにした。
 
 イワニセビッチは世界最速の時速210`台のうなるサービスを武器に1988年彗星のごとくデヴューしたが、世界四大大会、いわゆるグランド・スラムでの成績はウィンブルドンを除いてはなはだ芳しくない。彼はウィンブルドンのみに全情熱を傾けたようなふしがある。
 
 92年、94年、98年とファイナル(決勝戦)にすすんだが、あえなく敗れている。今年のランキングは125位、ワイルドカード(主催者推薦)でのウィンブルドン挑戦であった。過去のウィンブルドンの長い歴史の中で、ワイルドカードでファイナルまですすんだ選手は皆無である。
 
 私はイワニセビッチがウィンブルドンに登場して以来のファンである。かれのサーブが速いからファンなのではない、かれが私の父の若い頃によく似ているからである。鳥取出身の父も学生時代テニスをやっていた、しかも風貌が父にこころなしか似ているのだ。
 
 さらに、イワニセビッチは従兄のKに本当によく似ている。従兄はテニスではなくバスケットをやっていた。上背もある。私が最も信頼し気のあう従兄であるが、驚くべきことは、50代半ばになったいまも従兄は20代の体型をそのまま保っていることである。腹は全く出ておらず、がっしりしていながらスリムな体型は男の理想。そして、とにかく足が長い。 
 
 ところでウィンブルドンだが、ファイナルもセミ・ファイナルも最後まで試合を見れなかった。かれが負ける姿を何度も目にしてきたので、テレビを見ているとまた負けるのではないかとひどく心配して見てられなかったのである。
 
 しかしその心配はただの取り越し苦労に終わった。イワニセビッチはファイナル4度目の挑戦で見事ウィナーとなったのであった。
 
 何事も最後まであきらめてはならない。イワニセビッチは、たとえそれがいまにも消滅しそうな一筋の光明でも、けっして見失ってはいけないということを教えてくれたように思う。
 
更新日時:
2001/07/10
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