4      塩じい 去る
 
 一昨年の4月、塩じいは小泉内閣の財務大臣に就任した。「エッセイ」01年4月25日の「大参謀」、あるいは、この項02年2月5日の「塩の徳」に記したが、塩じいは国会の予算委員会で共産党・穀田氏の質問に対して、「忘れてしまいました」と答弁した人である。
 
 きょう、財務省職員を前にして退任の挨拶冒頭に「スカタンなことをいうて、すみませんでした」とのたまった。スカタンはバカな(こと)というほどの意味で、塩じいは時々スカタンを言ったという自覚があったのか、なかったのか、しかし、このスカタンはあの「忘れてしまいました」を指しているように思われる。
 
 今あらためて考えてみるまでもなく、塩じいのスカタンはおおかたの人々に笑いと明るさをもたらした。私はそれを塩の徳といい、徳のある人は得をすると書いた。塩じいは小泉内閣の大番頭、いぶし銀的存在だった。
 
 9月22日発表された第二次小泉改造内閣はたしかに若返った。塩じいがいたら、平均年齢は59歳ではなく、もっと上がっていた。後進に道をゆずることは必要である。塩じいは次の総選挙には出ないという。政界から身をひくという。それもひとつの選択かもしれない。
 
 若返った内閣にはもう塩じいのような人はいない。財務省にかぎらず各省庁の木っ端役人相手に、自民党のうるさい族議員や派閥の幹部相手に、血のめぐりの悪い報道記者相手に、国民の視点に立って、ガツンといいたいことをいってくれる古参の老爺がいない。それが寂しい。
 
 胆嚢炎を患い、体力に自信をなくしたのが今回の勇退につながったのかもしれない。やることはやった、塩じいの独白である。塩川正十郎さん、私はあなたのファンのひとりでした。
 
※塩じいは今夕(9月24日)、小泉さんほかの前閣僚と共に「なだ万本店山茶花荘」で会食した。ご相伴にあずかりたかったですね(笑)※
 
更新日時:
2003/09/25
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