35      夢芝居
 
 久しぶりにテレビの前にどっかり腰を据え、テレビ朝日系列のネイチャリングSP「シンドバッドの海」を観た。小林薫が案内役をするのはインド以来ではないだろうか。アラビア半島へは20代に旅したが、イエメンには行かなかった。イエメンの小さな町の路地を小林薫は歩く。彼はアジアと中東が似合う。似合うというより溶け込んでいる。
 
 小林薫は西欧には似つかわしくない。ギリシアやスペインなら似合うかもしれないが、フランスやドイツ、英国は場違いであろう。私はかねがね、小林薫を主人公とした海外ドラマをみたいものだと思ってきた。小林は中東産油国に支店をもつ総合商社の営業部次長である。いや、営業部次長だった。
 
 彼は天然ガスの利権をめぐって、ライバル商社との過酷競争を余儀なくされるのだが、オランダと英国のコングロマリットの利害が衝突、その仁義なき企業戦争に巻き込まれ、悪に手を貸す。鬼神も驚く奮闘の結果、あと一歩の所まで漕ぎつけるが、ライバル商社に逆転されてしまう。家族の絆も友情も壊れ、小林は身も心もボロボロになる。
 
 学生時代から挫折に無縁であった彼がはじめて味わう挫折感。それは単に挫折感を通り越して、救いがたい屈辱感となって彼を打ちのめす。誰にも告げず彼はギリシアに旅立つ。ペロポネソス半島、メテオラ、サントリーニ島、あてどもなく彷徨い歩く彼を待ち受けていたのは…。
 
 小林薫と同期入社の本社総務部長に津嘉山正種、ロンドン支社・営業部次長にイッセー尾形、現地での上司・営業部長に橋爪功、小林の部下に今井雅之、中村トオル、竹ノ内豊。本社筆頭専務に片岡仁左衛門。小林の奥さん役に樋口可南子、専務の愛人に高島礼子(後に小林に絡む)。
 
 ライバル商社の社長に津川雅彦、専務に鈴木瑞穂、営業本部長に石橋蓮司、次長に磯部勉、経理部長に柄本明、社員に萩原流行、宍戸開、ユースケ・サンタマリア。小林の無二の親友に奥田瑛二。
 
 新聞記者役に椎名桔平、生瀬勝久、医師に役所広司、代議士役に杉良太郎、佐藤慶、代議士秘書に小野武彦、刑事役に本田博太郎、平泉成。メテオラで知り合う男に塩見三省。
 
 ほかに林隆三、田中邦衛、中江有里、水野美紀、戸田菜穂子、岡本綾、篠ひろ子、富司純子、島田正吾、アンソニー・ホプキンス、ダニエル・オートイユ、ロバート・カーライル、ソフィー・マルソー、ケイト・ブランシェット、グゥイネス・パルトロー、バネッサ・レッドグレーブ。
 
 上記の豪華なキャスティングで、90分×12回の連続ドラマを制作してはもらえないでしょうか?ストーリーの詳細は観てのお楽しみですが。昔、といってもほんの25年くらい前は、面白そうなドラマがあった。清張ものなどは特に面白く、原題をみて一体なにが始まるのかとワクワクした。いわく「球形の荒野」、「砂の器」、「ゼロの焦点」など。
 
 少し前までNHKで深夜、アーカイブと称して再放送していたが、日本が負けてワールドカップも終わった事だし、またやってくれないでしょうかね。
 
 
更新日時:
2002/06/29
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