30      奇妙な返金
 
 21世紀ともなると変なものが流行するもので、今年はウソ肉が流行した。輸入肉を国産と偽っての偽装工作の多さは、ブルータスお前もかと嘆息させるに充分な蔓延ぶりで、賞味期限のウソ表示や使用禁止の化学薬品の使用などと併せると、大手から中小まで名だたる企業は総崩れの感がある。
 
 秘伝、隠し味の好きなこの国の国民性に合致すると嫌味をいう人もいるが、台所を預かっている主婦や主夫にとってウソ表示は由々しき問題で、ウソの指令を出した人たちの猛省を強く促したいところであろう。
 
 今回、札幌西友・元町店が昨年9月から最近までに豚ロースと牛タンを買ったと思われる人に返金すると言い出した。輸入肉を国産と偽ったからで、自己申告制でレシートは不要とのことであった。これをきいた時、私は予想外の混乱が起きると思った。そう思った人はほかにも大勢いたのではあるまいか、案の定大混乱を招く次第とあいなった。
 
 西友の開示した数字によれば、この1年間で売ったウソ肉は約1380万円、それに対して返金額(9月27日〜29日、1548人)は4928万円であるという。誰がみても帳尻は合わないのだが、帳尻の合わなくなることは先刻承知のはずではなかったか。
 
 牛タンを年に200`〜300`も食らう人がいるのかというと、どうも札幌とその近郊にはいるらしい。牛と同じで胃袋が4つあるのだろう。それだけ食らう人の中には当然の事ながら若い人や、その筋のこわい人も混じっていたに違いない。その数の多さに主婦も唖然とした。いつ買物に来たの?
 
 自己申告とは便利この上ないと彼らは思っただろう。札幌近郊どころか、道東や道北から訪れた人もいたとか。ガソリン代の十倍の返金額が手に入れば、日帰り400qの往復も苦にはなるまい。
 
 札幌の西友元町店は今回二重のミスを犯したと私は思っている。ウソ表示だけなら2002年のはやり、西友も流行に乗り遅れたくなかったのかと蔑視してすませたかもしれない。が、この奇妙な返金を知ったからには蔑視に失笑も加味される。
 
 正直者は損をする、西友元町店はそう思ったやもしれぬ。勿論、自分の姿が見えていないからそう思うのである。返金した人、返金された人、両者の共通点は自己申告ということであり、返金した人はウソ肉、された人の一部もウソ肉。不景気は巷間に様々な人を点在させるようである。
 
 
更新日時:
2002/10/01
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