26      ハリー・ポッター
 
 きょう「ハリー・ポッター四作目」が一般に売り出されたという。以前「賢者の石」の原作を読み、映画をみたときも思ったのであるが、どこが面白いの?と誰でもいいから聞きたかった。真面目な話、どこがどう面白いのか教えてもらえないでしょうか。私には「ウィロー」のほうが余程面白かった。
 
 映画全般についていえる事なのかもしれない、配給会社の都合もあろう、面白い映画が来なくなって久しい。作家もディレクターも元気がなくなったのか、そうではなかろう、元気はあるのだがスポンサーがつかないのであろう。
 
 本を読みだして、洋画を見だして半世紀も経てば、だいたい面白さの核心部を把握できる。世の中の傾向も読めるようになる。ハリー・ポッターの日本での販売部数が1200万部を越えたというのは本当であろうか。本当だとすれば、どこでだれがいつ買ったの?
 
 こうした私の言いように反感をもつ方もいると思うので、面白くない理由をかいつまんで申し上げる。ハリーポッターの最大の弱点は山と谷がはっきりしていないことである。主人公と仲間とのドラマにメリハリがきいていない、したがって盛り上がりに欠ける。なんとなくストーリーが進んで、なんとなく尻すぼみに幕が下りる。
 
 テレビ・ゲームやパソコンソフトに慣れ親しんだ世代にとってはあれでよいのかもしれないが、私には全く物足りない。流行などというものは、みなが追うから自分も追うということであって、追わねば不安なのだろう。周囲から取り残されるのではないかという強迫観念にとらわれるのだろう。あるいは、流行に心がはやるのであろう。心がはやると矢も楯もたまらなくなる。
 
 次がどうなるのかワクワクするということなら、小説の傾向は異なるが、コナン・ドイルやジェフリー・アーチャーの本のほうが、筋立てのインパクト、展開の妙味、山と谷のコントラストなどの点で余程ワクワクする。
 
 その点ハリー・ポッターは、ダーッと流れていって、バーッと仕掛けが提示され、またダーッと流れ、最後はバーッと終わるダバダバの世界である。とても英国人の作品とは思えない。夢があるということなら、「不思議の国のアリス」のほうが夢がある。
 
 感銘をうけた小説や映画が記憶に永くとどまるのは、小説の一小節、あるいは一行、映画のワンシーン、または一コマが私たちの心に強く深く印象づけられ、定着するからである。小説や映画の内容すべてを憶えているわけではなく、断片的にとどまるのだ。
 
 そういう意味で近年の傾向をおもうと、記憶にとどまらず、定着しにくい、ふわふわした浮遊物みたいな作品に人気が集まるのではあるまいか。メリハリはないが、ダバダバと次の展開を急がせる作品に。これではまるでテレビゲームである。君たち、そんなに急いで何処へ行く。
 
 冒頭にも記しましたが、どこがどう面白いのかお分かりの方、ぜひ教えて下さい。よろしくお願いいたします。
 
 
 
更新日時:
2002/10/23
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