15      企業入札
 
 もうはやイラク戦争後の復興についてのインフラ整備(の工事)の入札が米国内ではじまっている。米国政府が企業に対して入札を実施しており、イラク唯一の港ウムカスルの港湾整備に関する工事は米国の民間企業がすでに落札済みであるという。
 
 戦後のイラク暫定統治が米国中心で行われることに異を唱える国は多いかどうかはともかく、国連の役目は人道支援だけでなく、復興支援、インフラ整備に関しても出る幕はあるわけで、米国内民間企業の入札を起ちあげた彼らの気の早さはどうしたものであったか。
 
 北アイルランドのヒルズバラ(Hillsborough)でブッシュ、ブレアの米英両首脳が会談した。ヒルズバラはベルファストの南南西18`(A1経由)に位置する城砦の町。−boroughは市壁を巡らした町や城砦を指す。
 
 会談の主旨はプレスの伝えるところであり、会談後の記者会見席で両首脳は「イラク戦争後の暫定統治機構に国連が人道支援を中心に決定的な役割をはたす」と発表した。人道支援中心に、である。資金を出す国は日本を中心に、だろう。金を出しても口出すなはこの際返上して、口も出すべきである。
国連への日本の分担金は20%で、米国の22%に次いで二番目、しかも米国は分担金滞納の常習犯で、その点日本は常時100%完納の優等生なのだ。
 
 戦後のイラクは復興、人道支援、文民統治の三部門に分かれ(復興人道援助室=ORHA)、すでにそれぞれの責任者は決定済みであるらしい。それもまた手回しがよいというほかないのだが、ヒルズバラでのブッシュ&ブレア会談ではブッシュがとりあえず折れたようである、先行きどうなるか不透明な部分をいっぱいのこしたまま。
 
 米国政府は米国主導に固執したが、英国政府は国連主導にこだわった。戦費も兵士も犠牲にしたのだから、米国主導が当然という彼らの考えを牽制し、国連の議決を経ず宣戦布告し、国際社会の反発を買った米国政府に対して兄貴分の英国が強くアピールしたように思う。
しかし、これだけでは仏つくって魂入れずになるおそれは十分ある。
 
 ところで先刻の入札の話にもどるが、復興にかかる費用は米国の試算によると約10兆円。これを米国の民間企業が落札し請け負うとすれば、イラク戦争自体がビジネス、単なる商取引であったかということになりはしまいか。
もっとも、イラクの石油という利権の話となると10兆円どころではない、将来的にはその数十倍にのぼるだろう。米国の属国が一つ増えたというわけだ。
 
 戦争の裏では死の商人(かつては武器を売る商人をさしたが、いまはインフラ整備にかかわる企業、石油輸入業者もこの範疇に入る。風が吹けば桶屋がもうかる)が暗躍し、主に共和党上院議員に多額の政治献金をし、巨額の利益を手中にする。そういう図式、というと怒る人もいようが、明らかにその図式は完成している。
 
 おそらく2001年9月11日以降青写真は彼らの手で秘かに作成されていたはずである。そういう疑念はすでにあった、米国政府の真の狙いがビンラディンか、サダム・フセインのイラク(中東の某産油国)か、もうすぐ見えてこようと記した日から。
 
 米国らしいといえばこれほど米国らしいやり方もほかになく、かの地での企業入札は桜の盛りを過ぎても真っ盛りである。各種調査によると米国民の70%がイラク戦争を支持したというが(バグダッド陥落後、支持率は81%にアップ)、愛国心の発露なのか、最強国に住む勝者の論理なのか、結局あらゆるゲームは勝たねばならないという国民性のあらわれであろう。それが米国経済の牽引力であってみれば。
 
更新日時:
2003/04/10
次頁 目次 前頁