38      ぶっつけ本番
 
 もし予約なしでふらりと入ったレストランで、ウチは予約なしでは食事は許可しませんと言われればどうだろう。店内はガラガラ、閑古鳥の鳴き声もしないような状態なのに、どうなっているのか。その店は、予約客のために遠方から特別の食材を調達するわけでもなく、年中予約客でごったがえしているわけでもない。なのに、いきなり来られては困るのだという。世の中は広いから、そういう店もないではない、そう思うほかあるまい。
 
 中国の瀋陽にある「総領事館」という店で、前もって予約していなかった5人の客が「亡命ランチ」を食べに来た。あいにく店主は不在であったが、なに、店主の在不在にかかわらず、予約なしだと食事はおろか、入店すら断られるのである。店員は、予約のない場合のマニュアルがないので、どう対処してよいか分からないという、保育園の園児じゃあるまいし。
 
 5人の客は、「鰻のソテー バラ色のアーモンド・ソース添え」(ローストしたアーモンド2分の1カップ、ブラウンシュガー大さじ1、牛乳1&2分の1カップ、中力粉4分の1カプ、砂糖大さじ3、塩小さじ4分の1カップ、サフラン小さじ8分の1カップ、赤いバラの実または花2分の1カップ、鰻の切身縦5センチ横3センチを900グラム、小麦粉2分の1カップ、バターとオイル各大さじ3、他にスパイス・パウダー用として、ブラウン・シュガー大さじ2分の1、シナモン小さじ4分の1,ナツメッグ小さじ4分の1)を食べにきたのではない。
 
 だいたい、何月何日何時何人でお昼を食べに行きますからと、電話で予約を入れる類のランチではあるまい。ランチはウィーン協定とやらで予約なしでも食べれると保証されていたのではなかったか。上記のメニューのごとく、突然来られたらどうしようというものでも、不測の出来事に備えているのがレストランであろう。「総領事館」という金看板を掲げているのである、ランチも出せないのなら看板をはずしなさい、看板を。
 
 そして新しい看板に、「マニュアルなしでは料理を作らない店」とでも書いておくことですな。ついでに、「一見さんお断り」という但し書きも入れておきなさい。そうすれば、誰もランチなど食べに来ないし、ランチを食べたい人は、お隣の「アメリカ屋」とか、少し離れた「英國屋」へでも行くことでありましょう。
 
 
 
更新日時:
2002/05/13
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